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Music school purevoice_instructor's NOTE

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2006年 02月 08日

あってはならぬこと

前回レコ実習記事でしたので、今回は実際のレコーディング現場の話をしましょう。今年の現場初仕事は1/4に東芝スタジオで行われたある女性アーティストのレコーディングでした。その日のプログラムは、リズム録音(ボーカル同時)〜ストリングスセクションダビング〜ホーンセクションダビング〜ハープダビング、、、 と数十名のスタジオプレイヤーが参加し、全録音作業を1日で終えるものでした。スタジオワークは時間との戦い、どの行程もタイトなスケジュールで組まれており、これら行程を如何に掌るのかがコーディネーターさんの手腕にかかります。 この日現場にて絶対あってはならぬことがありました。



それはコーディネーターさんのミスでした。録音開始時間の間違いはたまにあります(あってはならぬが)、今回のミスはスタジオ場所の間違いでした。仕事発注は「1/4、13時から天王洲東芝スタジオの3スタジオで、リズム録音お願いします。楽器はエレキギターです」という内容でした。私は連絡を受けた時、そのミスを瞬時に気づきました。連絡を受けた際、私の耳録音テープはエラー箇所を巻戻し再生していました。再生箇所は部屋名称。指示は「天王洲東芝スタジオの3スタジオです」 テープ再生→「3スタジオ」「3スタ?」「3??」。天王洲東芝スタジオはA.B〜名称で、3スタは存在しません。実は東芝スタジオは、溜池にある本社スタジオと天王洲にあるテラスタジオの2つの場所が存在します。「3スタジオ」と呼ばれるのは本社なのです。コーディネーターさんはこれらを取り違えたのでした。

この日動くミュージシャン総勢は数十名、しかもタイトスケジュール。あってはならないことが現実に予期されたのです。もしこの間違いに誰もが気づかず当日を迎えていたらどのような状況になったのか? 全員が指示とおりスタジオに行く、けれどそこには誰もいない… 。私のミス指摘にはコーディネーターさんもかなり焦っていました。結局は修正情報が回り、なによりも数十名のミュージシャンがなにも無いスタジオに行かずに、、、すみました。今回のトラブルの責任をコーディネーターさんに押付けることで事は解決はしません。我々のすべき仕事は単にプレイするだけでなくアーティスト、そして関連するスタッフにとって良い現場作りでもあります。現場ではどのようなトラブルがあるかわかりません。録音が始まる(仕事を受ける)ときから、すべて終えて帰るまで、一瞬も気は抜けないのです。

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当日の現場は良く知るメンバーが来ていました。ドラムにアーミンミンツビヒラ、最近は平井堅やケミストリーのレコーディングでも活躍しているドラマーです。常にタイトなプレイをしてくれます。ベースに岡ゆうぞう、同じく平井堅のレコーディングや、クリスタルケイのツアーなどにも参加しています。彼のプレイはとてもやりやすく、私自身「素」になれるボトム〜リズムをしっかりと供給してくれます。この日、現場では120%使う予定のないスミスのフレットレスを持って来て、みんなに見せびらかしていました!(笑 岡は現場でいつも楽しい話題をくれます。そしてKeyに今回のアレンジャーでもある松浦晃久。ミイシャや今井美樹のアレンジ、ケミストリーへの楽曲提供など、幅広く活動するKeyプレイヤーです。彼とは古くからの付き合いでこれまで共に多くの仕事をしてきたパートナーです。繊細なKeyプレイとアレンジメントには定評があります。

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朝の現場は皆が連絡ミスの話題でもり上がっていましたが、このメンバーで音を出し始めたらすべてはOK。そんなことはどうでもいい、と全員がプレイに集中します。サウンドチェック時には自然とセッションが始まりました。信頼あるメンバーとのコラボレイトは自己のプレイを最大に引き出してくれます。この瞬間こそ、しっかり心に録音してあります。本番時は、あってはならぬミスの話など必要はないのです。

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ここに一部始終を知る男を紹介します。あれ?正木!こんなところでなにやっている??そう、ピアノ移動を手伝っているのが、前回レコ実習で「?」マークをゲットした正木くんです。彼は定期的に私のレコーディング現場にアシスタントとして出向き、様々なことを学んでいます。実際の現場で学ぶことは多くあります。プロとしてすべきこと=それは、単にプレイするだけではなく、時間、スケジュールの絶対的管理。もしかしたら、あってはならぬことがあったこの日の現場こそ、最高のレコーディング実習だったのかもしれません。

WE ENJOY THE MUSIC / purevoice

by purevoice | 2006-02-08 21:10 | Comments(7)
Commented by 正木 秀和 at 2006-02-09 01:49 x
一刻も早く‘?’の除名をしたい正木です。(汗)
実は…このお話には、もう一つポイントがあります。
コマさんが連絡のミスに気づかれて再確認をコーディネーターさんに促したことで何もなく作業が始まりましたが、コマさんより早く連絡が回っていた方は、疑問は感じたそうなのですが指摘はされなかったようです。

話は飛びますが上記にもありますように、ストリングス、ホーンというセクションがダビングをしリズム録音にはギター、ベース、ドラムだけでなくピアノもいるという現場。
曲がバラードであったことも大きく関係しますが、‘リズム録り’でのギターの立ち位置にも学ぶ事が多くありました。
色を足すことに重点を置いたアプローチ。決して前に出る訳ではなくとも、その音がある無しでは全く違うものになる無くてはならない音でした。


Commented by 正木 秀和 at 2006-02-09 01:49 x
続きます…


以前私にあるドラマーのアプローチについて教えて下さったことがあります。
「…音数が少ないとか、何も叩いていないんじゃない。それをやっているんだよ…」と。


録音の始まりから終わりまで全体を見渡しての細心の心遣いを見せて頂きました。その現場に居なくてはならない存在であると同時にそこに信頼が生まれているのだなと感じました。

一人のミュージシャンとしての大切な一面を学ばせて頂きました。
そしてそれが当たり前なんですよね?
Commented by purevoice at 2006-02-09 04:08
正木>
22、3年前、私が学生の頃の出来事で今でも鮮明な記憶として残っていることがある。それはプロボーカリストのバックで弾く機会を与えられた時のこと。目黒のライブハウスだったと記憶している。リハーサルも順調で安心していた。しかしいざ本番時、1音すら音を出す事ができない自分がいた。あっという間にエンディングを迎え、ステージは終わった。その間、私はステージに立っていただけ。控え室に戻りボーカリストに話した。その内容は、あの場で音を入れたら歌が台無しになってしまう気がした。だから弾けなかった、、、と。要は単純に私自身バラッドに対するバッキングアプローチを見つけられなかったのだ。プロはニコりと微笑んでくれた。が、それ以後サポートの話は無かった。音が必要だからこそ私を呼んでくれたのに、私はその信頼を裏切ったのだからあたりまえだ。その出来事を期に、歌とギターの絡み、アンサンブルとして必要なあり方など、いわゆるその手の妙の世界に連れて行かれた。多く迷っただけ、多く失敗しただけ向き合える。正木、いまこそおおいに迷い、悩みなさい。そのぶん確実に抜け出よう。安心していいよ!この時プロは私におもいきり「?」だったのだから。
Commented by KANAYA☆ at 2006-02-11 17:54 x
ご無沙汰致しております。KANAYAです。
「あってはならぬこと」拝見致しました。
本当ヤバかったですね。
駒さんが気がつかなかったらレコーディングにならなかったですね。(笑)

目黒のライブハウスの件は初耳ですね。駒さんにもそんな時期があったんですか??ギター持って生まれて来たと聞いてたモンですからてっきり・・。(笑)

僕もぶっちゃけますと、、1番の苦い思い出は、駒さんのボーヤをして修行させて貰い、だいぶ自分のプレイに自信がついて来だした頃、駒さんに紹介されて行った歌モノの現場でリタンに時間がかかってしまい、途中退場させられた事ですね。かなり自分では弾けるつもりになっていただけに相当ショックでした!初めての現場でダメ出しくらって、技術不足を痛感するハメになってしまいました。(泣)

続く・・
Commented by KANAYA☆ at 2006-02-12 23:19 x
今回の「気づき」もそうですが、現場をコントロールする力って凄く大事ですよね。どんな仕事をするにせよ必要な能力だと思います。プロの現場では、色んな要求やハプニング?!に適応しなければいけません。初対面の時なんかには特に?なリクエストに思える事があるかもしれません。そんな時でもパニクる事なく、相手に振り回されないで冷静に対処する力が必要だと思います。そして時間をかけてでも、お互いが納得の行くベストな結果を導いてあげる・・。そんな積み重ねがお互いの信頼を高め、次に繋がって行くのです。
purevoiceの生徒さんは、そういう所も駒さんから学んで欲しいと思います。

では。
Commented by purevoice at 2006-02-13 15:48
金谷>
そう、金谷が現場ダメだされた件は懐かしい話だね。
私は当時、3度チャンスを与えることを約束したと覚えているが、、、
その3度目のチャンスがその仕事現場だったな。
当時金谷は生徒ではなく、ボウヤという立場からプロというフィールドでの活動を与える時期ではあった。現場は、技術力と精神力がしっかりとバランスとれてこそ乗りきれる場。私自身も現場に行き始めた頃はそのことを強く体感したものだ。これは音楽の世界だけのことではないね。どの道もプロという世界には必要である要件なのだろう。リクエストは100人いれば100ある。そのリクエストも場面場面で変化する。答えるのは楽しいさ。無理な要件ほどやりがいある。これらは本当は言葉では伝えられないことだね。体感することが最高の学びなのだろう。
金谷が得た失敗?は金谷の人生にとって間違いなく成功に繋がるよ。

昨日、適応を学ぶ場を設けました。そう、セッション。
後日レポート書きいれるので楽しみにまっていてな!
Commented by KANAYA☆ at 2006-02-13 22:10 x
はい、しっかり肥やしにさせて頂いてます〜。
レポート楽しみにしております!


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